美しき造船王は愛の海に彼女を誘う

プロローグ

 彼の指が頬をなぞる。下がろうとすると、長い腕が身体を回ってあっという間に抱き上げられた。

 ベッドへ運ばれ、逃げる私をまずキスで陥落させ、両腕を私の顔の横に置き身体を寄せてくる。

 もはやこうなると身動きひとつとれない。上から彼が射抜くような瞳で私を見ている。

「……あ、どうして……」

「あと二週間……やっとだ……」

 彼の指がせわしなく私の全てを暴こうとする。

「ああ……」

「さくら……君を迎える準備をするとあの時も言っただろ。絶対逃がさない」

 彼はつらそうに私を見た。彼に手を向けた。こんな顔をさせたかったんじゃない。

 彼は私の手を握り、口元に持っていくとキスをする。

「あ」

「君がいない世界で僕は息ができない」

「蓮さん……ああ!」
< 1 / 401 >

この作品をシェア

pagetop