美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
「さくら、君だって……そうだろ?」

「あああ」

「見ろ……僕らは……もう離れられない」

 彼は鏡に映る抱き合う私たちを見せた。

 彼を待ち続けた身体は正直だった。どんな嘘もすぐに見抜かれた。

「さくら愛してるんだ……戻っておいで……そして僕の妻になるんだ」

 ずっと同じことをうわごとの様に口にしながら、何かをかなぐり捨てた彼は今までとは違って見えた。

 そして、ありったけの想いを身体で表現して、私を抱き続ける。

「ああ……!」

 あまりの激しさにすがりついた。彼の汗が身体に落ちてくる。

 仕事が約束の一年で片付かないかもしれない。迷いがあった。彼に見抜かれた。

 ベリが丘の玲瓏皇子。

 私は自分自身の花も、仕事の花も彼に咲かせてもらった。

 彼との恋は身分違い。それはわかっている。最初から彼を利用したと周りに責められた。

 それでも今、彼は全身で私に愛を伝えようとしてくれている。

 私はあなたを……。

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