クズな君と恋したら

誘拐







そんな日の帰りだった。

いつも通り、学校の正門近くに停められている黒塗りの車に向かう途中のこと。



「おい、あの女でいいんだな?」


「そうだ、よし今だっ」



そんな男たちの声が聞こえたかと思えば、いきなり後ろから首をホールドされた。



「っ!?……な、にすんのよっ!」



誰……!?

やばい、やばいやばい!

あいにく、次の角を曲がらなければ水上の乗る車には辿り着けないし、死角となっている。


首に巻きつけられた太い腕をどかそうと力を入れるけれど、かなうはずもなく。



「大人しくしろ」



暴れる私の耳元で、男の低い声で囁かれる。
それに、ほどこうとすればするほど強く閉まる首元の腕。



「ぅっ……」



さすがに苦しくなって、反射的に抵抗することをやめる。
ど、どうなるの、私……!

過去にこういったことはあまりなかったから、頭の中が完全にパニック状態になって何も考えられなくなる。



呼吸は浅くなり、心拍も早く、恐怖心が頭の中を埋め尽くす。



「こっちに来い」

「ひゃっ……!」



ぐいっと引っ張られて、強く掴まれたまま白い大型自動車の方へ引き摺られていく。

それは、水上の車とはまるで反対方向。

水上に助けを求めたって、車の中に乗っていたら聞こえるはずない……っ!



「みず、がみ……っ!っ、やだ!」



でも、助けを求めるなら今しかない……!車に乗ってしまえばもう、私は……!


必死に水上の名前を呼んで、男にも抵抗する。



「水上っ!」


「このっ……バカ女!」


「いっ……!」



長い髪を思い切り掴まれて、一気に車の中に引き込まれていく。

水上、水上……助けてよ……っ!



「ふっ、もう届かねーな!」



そんなことを思っているうちに、体は車の中に放り込まれ、カーテン付きの扉が勢いよく閉められた。

嘘でしょ……?

私、これから死ぬの……?



何もない車の後部座席に私の涙がポタポタと落ちていく。



そして、運転席に私を拘束していた男が乗り込む。



「ぎゃはは!これで懸賞金ゲットだぜ!」



不潔な笑い声が車内に響いた、その時___。








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