余命宣告された年下社長に、疑似結婚をもちかけられまして。
一話
〇ホテルのテラス席(夜)

夜景が綺麗なテラス。風が心地よく吹いている。
向かい合って座っている俊斗と沙織。
俊斗が沙織に、真剣な眼差しを向ける。

俊斗「俺の一生のお願いを聞いてほしい」
沙織「お願い……ですか?」
俊斗「余命半年と宣告された。三ヶ月でいい。俺と疑似結婚生活をしてくれないか?」
沙織「……えっ、け、結婚……。余命って……」

沙織(え、社長……死んじゃうの?)

俊斗「思い出を作ってくれないか?」

沙織(なんで私なの? アラサーの私をからかってんの?)

俊斗かなり真剣で深刻そうな眼差し。

沙織(いや…どうやら本気っぽい)

俊斗、顔を近づけてくる。

俊斗「俺には時間がない。すぐに答えてくれ」
沙織「こんな、大事なこと、即答できませんっ! そ、それに年下ハイスぺ男子は苦手なんです」
俊斗「苦手? そんなの克服すればいい」

俊斗、熱い視線を注ぐ。沙織、照れつつも困惑。



〇(回想)会社(昼)
入り口『コネクトサービス』の看板。
スタイリッシュなオフィス。
オープンスペースで、思い思いに仕事をしている。
AIロボットが自由に動き回っている。

IT関連のソフトウェア開発などオープンイノベーション支援サービスの会社。
AIロボットやペットにも力を入れている。
就職して一年。
29歳にして、やっと勝ち取った自立への一歩だと思ったのに。30歳になりもっと頑張ろうと決意したところだった。

沙織(お父さんもお母さんもひどい……)

仕事に集中できなくて沙織は視線を彷徨わせた。
俊斗はガラスで覆われた社長室にいる。
沙織、ちらっと彼を見る。
俊斗、ため息をついている様子。

沙織(今日の社長…元気ないな……)

沙織、パソコンに向かって集中して仕事をする。
両親に言われた言葉がフラッシュバックし、(※ここで内容は明かさない。)手が止まる。

俊斗「松下、昨日頼んだデータはできたか?」
沙織「(いつのまにかすぐ後ろに来ていた俊斗にびくっと驚く)は、はいっ」
俊斗「急ぎで確認したいから送っといてくれ」

俊斗は仕事ができる。テキパキと指示を出す。
沙織は俊斗が苦手。年下ハイスぺ男子は、年上凡人のんびり女子の沙織には異世界の人だと思っている。怯えて困惑顔。

花梨「さおりーん、花瓶割っちゃった」

俊斗の妹、花梨が泣きながら近づいてくる。

沙織「花梨さんは怪我されてないですか?」
花梨「うん……」
沙織「片付けるので心配しないでください」
花梨「ありがとう」

俊斗、その様子を見ている。

〇会社・休憩室(昼)
休憩室には数名の社員が休憩している。
沙織とが一緒にいる。

花梨「今更なんだけどぉ、さおりんって、なんでお兄ちゃんの会社に入社したの?」
沙織「言ってなかったですよね。祖母を助けてくれた会社なんです」
花梨「へぇー」
沙織「AIロボットですよ」
花梨「ロボットが役に立つんだね。あんな機械、役に立たないと思ってたぁ!」

沙織(花梨さん、好きなことを何でも口にして言っちゃう性格なんだけど、なぜか私に懐いてるんだよね)

花梨「あ、そうだ。午後からわかんない仕事いっぱいありそうだから教えてね」
沙織「わかりました」

沙織、苦笑いしながらも頷く。
沙織、両親に言われた言葉がフラッシュバック。※ここで内容は明かさない。
手作り弁当を食べながら落ち込む。


〇ホテルのバー(夜)

カウンターで号泣しながらカクテルを呑んでいる沙織。
相当酔っ払っている。

俊斗「あれ、松下さん?」
沙織「しゃ、社長っ、なんれ、いるんでしゅか?」
俊斗「口が回ってないよ? 松下さんアルコールはダメだったよね?」

沙織には怒ったように見えているが、実はすごく心配している。
涙をポロポロ流している姿を見て、俊斗は彼女の手を掴んだ。

沙織「プライベートのことなんで、ほっといてください」
俊斗「そんなわけにいかないだろ。テラス席で頭を冷やそう」

手を引いて連れ出す。


◯ホテルのテラス席(夜)

俊斗と沙織はしばらく関係ない話をして過ごしていた。

俊斗「で、泣いていた原因は?」

俊斗、仕事中とは違い穏やかな顔。でも話さない沙織。

俊斗「言いたくないならいい。でも一人で抱え込まないでくれよ」

沙織、不覚にも、キュンとする。
酔いが覚めてきた沙織は、逆に質問をする。

沙織「社長、今日……元気がなかったですよね。何かありましたか?」
俊斗「俺のことをよく見ていてくれてるんだな」
沙織「そ、そういうわけじゃないんですが……。私にできることがあれば言ってください。お恥ずかしながら、酔っ払って倒れてしまいそうなところ助けてもらいましたし。力になりたいです」
俊斗「いつも妹の面倒を見てくれてとても力になってくれているよ。仕事も優秀だしな」
沙織「……いえ」

無言の時間が流れる。
沙織、緊張して彼のことを見つめていた。

俊斗「じゃあお言葉に甘えて、何でも言うこと聞いてくれるか?」
沙織「はい」

(回想終了)

冒頭に戻る。

俊斗「俺の一生のお願いを聞いてほしい」
沙織「お願い……ですか?」
俊斗「余命半年と宣告された。三ヶ月でいい。俺と疑似結婚生活をしてくれないか?」
沙織「……えっ、け、結婚……。余命って……」

沙織(え、社長……死んじゃうの?)

俊斗「思い出を作ってくれないか?」

沙織(なんで私なの? アラサーの私をからかってんの?)

俊斗かなり真剣で深刻そうな眼差し。

沙織(いや…どうやら本気っぽい)

俊斗、顔を近づけてくる。

俊斗「俺には時間がない。すぐに答えてくれ」
沙織「こんな、大事なこと、即答できませんっ! そ、それに年下ハイスぺ男子は苦手なんです」
俊斗「苦手? そんなの克服すればいい」

俊斗、熱い視線を注ぐ。沙織、照れつつも困惑。

俊斗「何でも言うこと聞いてくれるって言ったよな?」

沙織(ど、どうしたらいいのーーーー!)

一話終わり



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