愛し、愛され、放さない
異常な独占欲
「――――行ってくるね」
「うん…」

「出来る限り、家にいてね?」
「うん。
もし出掛ける時は、一度百合くんに連絡するね」

「あ、そうだね。
うん、そうして?」

百合が出ていき、玲蘭は洗濯をし始める。

「あ!もうすぐ、九時だ!」
そう言って、ホウキとチリトリを持ち玄関を出た。

エントランスを出ると、マンションの住人達がエントランス前を掃除していた。

百合と玲蘭が住んでいるマンションは、月に一度マンションの前を住人達で掃除するという決まりがある。

もちろん仕事等で出れない住人もいるので、いつもいるメンバーは同じだ。

玲蘭同様、主婦ばかり。

「あ、黒沢さん、おはようございます」
「おはようございます!」
「おはようございまーす」

「おはようございます!」
玲蘭も、掃除を始めた。

そこに、見慣れない人が現れた。

「おはようございます!」

「え?」
「え?え?」
「誰?」

住人達が、首を傾げている。

「あ、僕、先々月に越してきた、夜野(やの)です!
2006号室の!」

「あー!」
「そういえば、引っ越しのトラック来てたわ!」
「初めまして!」

「すみません、なかなか仕事が忙しくて掃除出来なくて……」

「いいの、いいの!」
「いつも、私達だけだから(笑)」
「こんなに大きなマンションなのに、ほとんどの人が参加してくれないのよ(笑)」

「あぁ…(笑)」

玲蘭は、夜野を見て(あぁ…この人なんだ)と思っていた。

2006号室は、百合と玲蘭の家の隣のこと。

確かに先々月、挨拶に来ていた。
でもその日は日曜日で、対応したのは百合だった。
玲蘭は会わせてもらえなかったのだ。

(だから、百合くん“隣の人のことは気にしないで”って言ってたんだ……)

夜野は、百合や玲蘭と変わらないくらいの若い男。
百合が、自分以外の男性に会わせるわけがない。

玲蘭は一人、納得していた。


「夜野さんは、おいくつ?」
「お若いんでしょうね〜」

「あ、26です」

(百合くんと同い年?かな?)
玲蘭は落ち葉などを掃きながら、耳だけ傾ける。

「若〜い!!」

「でもほら!
黒沢さんなんか、もっとお若いわよ?(笑)」
「あ、そうね!」
「確か……24よね?
ウチの娘と同い年だったはず!」

「え?あ、は、はい」

急に話を振られ、慌てて頷く玲蘭。
すると、夜野が玲蘭を見て微笑んだ。
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