愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
私に言わせればそういう方たちの下品な部分を目の当たりにさせられただけ、だが。

そんなわけで体力、メンタルともに削られ、ぐったりとしていた。
けれどこれを話すのは典子さんの悪口を言うようで、気が引ける。

私が黙っているから呆れたのか、宣利さんが小さくため息をついた。
おかげでびくりと身体が小さく震える。

「怒ってないよ。
今日は姉さんとどこに行ったかだけ、教えて」

ぽんぽんと軽く、彼が私の頭を叩く。
それで身体に入っていた力を抜いた。

「……昼食会」

私から出た声は、聞き取れないほど小さい。

「うん、わかった」

でも、宣利さんには聞こえたみたいで、また軽く頭を叩かれた。

「食欲は、ある?
動けそうならなんか食べに行くし、無理なら買ってくるか取るかするけど」

「……傍に、いて」

「……わかった」

少し動いた彼の手が私の脇の下に入る。
そのままベッドヘッドに寄りかかるようにして座り、私を膝の上に抱き上げた。

「今日もいっぱい、頑張ったね」

宣利さんの胸に顔をうずめる。
そんな私の髪を、彼は撫でてくれた。

「花琳は偉いよ」

じっと、褒めてくれる彼の声を聞く。
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