続▪︎さまよう綸

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 波の音がする…潮の香りがする。海の見える開放的なチャペルで結婚式の真っ最中だ。初めてのことで少しの緊張はあるが、幸せな気持ちで新郎新婦を見守る。

 12月初旬の平日に結婚式をするから来てくれるか?と、航平から10月末に連絡があった。行ってお祝いしたいのは山々だが3時間近くかかる場所まで行く事になるので相談して返事すると答えると、航平は綸が高須になったことはわかっているから無理にとは言わないと言う。そこで気になって聞いてみる。

「航平…私が行っても大丈夫なの?高須って大丈夫?」
「もちろん構わないよ。高須様たちの宿泊はこの辺りではもう噂になったから毎年お越し下さる大切なお客様だと、パートの仲居さんたちを中心に逆に噂にした」
「そうだったの…迷惑を掛けていないならいいけど」
「本当にそこは大丈夫だから相談して連絡して。母さんにでもいいよ」

 正宗とお父さんに相談すると、綸の命の恩人の式だから行って来いと声を揃える。条件は車2台で移動と、式へも伊東さん小笹さんはつくということだったので直ぐ鞠子さんに連絡し

「それでも良ければ出席させて頂きたいです」
「ありがとう。それくらい想定内よ。泊まって行く?」
「ごめんなさい。最後まで出席はさせて頂いて、夜中に車走らせて帰ります」

 それからまず自分のことより伊東さん小笹さんに

「真っ黒の‘いかにも’とヘンテコな柄シャツで参列しないで一般的なものにして下さい」

 とお願いすると、その場にいた双子は爆笑し小笹さんは、ヘンテコ…と落ち込んでいたが私は甚く真面目にお願いしたのだ。
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