続▪︎さまよう綸
 そして私が選んだフォーマルスーツに白シャツ、シルバーのネクタイとチーフ姿で他の参列者と全く同じと言える姿の二人はこの場に溶け込んでいる…はずだったのだが到着当初から視線を集めた。私と歩く時の立ち位置、周りを見回しながら歩く仕草が新郎新婦を祝う参列者とは違っているせいだろう。これも仕方ない。航平にはまだ会えていないけど、式直前に挨拶した鞠子さんは私に会えたことと、私の顔色が春よりもずいぶん良いと喜んでくれ

「遅くなったけど、結婚おめでとう」

 と私を抱きしめてくれた。またここも温かい…それを伝えたくて正宗に会いたくなる。すぐには叶わない願いなのでチャペルに入る前に彼に電話をかけた。

‘どうした?’

 めったに私からは電話しないのでいきなり聞かれて申し訳なくなる。

「ごめんなさい、お仕事中に…何もないんだけど今…少しいい?」
‘ああ、何もないけど何かあったんだろ?ふっ’
「鞠子さんがね、結婚おめでとうって抱きしめてくれたのよ…私がお祝いに来たのに」
‘嬉しいな’
「うん…でね…正宗に会いたくなったから電話して伝えようと思って…ここも温かいって」
‘ああ、綸の周りは温かいな。俺は…温かいんじゃなく熱い…お前に熱あげてるからな’
「ありがとう…夜中になるかもしれないけど帰るから…」
‘ああ、何時でも待ってる’
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