続▪︎さまよう綸
 何やってんだ、俺は…ベッドに仰向けに体を投げ出し、ここ数日を思い返す。

 まず綸がなんだかそわそわし考え事をし始めた。すぐに気付いたが彼女のことだ…また俺たちが思いもよらないことを考えつくかもしれないと思い、そっと見守ることにする。一人で考え込む綸も可愛いと見ていたんだ。

 だが数日後、綸が動き始めたのに俺に何も言ってこない。おかしい。伊東たちに聞いても‘今回は…すみません。もう少し待ってあげて下さい’と言う。食堂でも京太さんとは何かしら話をしている気配だったが京太さんに聞いても伊東たちと同じ返事だ。俺はそれが気に入らないんだ。俺が知らないことを伊東たちは知っている?綸が話した?

 口を割らすために焦らし焦らし朝まで抱いたが、綸は言わなかった…会社で1日仕事をし会食後本家に帰る。出迎えた組員から特に組の方では変わりがなかったと報告を受け、綸が朝から夜まで屋敷中で働いていたとも聞いた。チッ…全く寝てないだろ…マンションへ帰らすべきだったな。部屋では綸が

「おかえりなさい、正宗」

 疲れを見せずいつも通り出迎えた。それも気に入らない…疲れたと俺には言えよ。疲れているはずの綸に苛立ちをぶつけそうで黙って背中を向けそのまま引っ込みがつかなくなったんだ。翌日は本家で組の仕事だったから綸とは会う時間はあった。眠れていない疲れた音色と顔色の彼女に

「おはよう、正宗。着替え用意出来てるよ」

 と言われ、違うだろ…今日は1日休みたいと言えよ。午後から何回か綸が俺に話掛けようとする気配は感じたが苛立ちを抑えられていなかったようだ。

「殺気立ってるぞ」

 と潤たちに言われまずいなと思ったまま今に至るわけだ。

 自分の部屋へ行ってしまったか…声を掛けられなかったんだろうな。別々に寝るなんてあり得ない。
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