続▪︎さまよう綸

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 2月初め、私はとても悩んでいた。人の一生のうち初体験と言えるものは限りなくあるらしい。そして正宗に内緒で少し動いたのだ。

 勘のいい正宗に‘どうした?’‘何があった?’と言われるが彼に今言うべきではないと口をつぐんだ。すると彼は、吐かせてやる…と朝まで私を快楽の波に溺れさせた。そしてそれでも何でもないと言った私と話してくれなくなって2日目…もうやだ…

 マンションで食事もお風呂も終えた彼は一人で部屋に入ってしまう。昨夜は本家で同じベッドで背中を向けられ眠れなかった。本家の部屋だから背を向けてでも仕方なく彼は同じベッドで寝ていたのだろう。

 今日ここで一人で部屋に入ってしまわれると…無理だな…もうやだって思って隠さず諦めて話そうと思ったけど…遅かったかな…

 彼の怒りか拒絶かのオーラが部屋のドア越しにでも伝わってくるようで耐えきれず自分の部屋へ入る。そのままクローゼットに入りチェストの奥から箱をひとつ出し抱きしめ踞った…失敗したな…昨夜は眠れず、その前日は抱き潰され寝ていない私は体力の限界だったらしい。ふっと意識が途切れるのを感じ、ああ昨日も今日も昼間は働いたもの…どこでも…座ってでも眠れるんだな。
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