そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~
 そんな私の心を知ってか知らずか、阿久津社長は料理を勧めてくれる。

 出されたお酒や料理はどれもすごく美味しかった。
 普段は口にすることのない珍しいものもあった。

「ここの料理長は、全国のホテル料理の大会で金賞を取ったんだよ」
「すごいですね。だからこんなに美味しいんですね」
「いっぱい食べて」

 そんな他愛のない会話が続く。

 遠くに見える夜景の灯りもすこしずつ減り始めているようだ。
 それだけ時間が経ったということ。

 気軽にこんな素敵なところで美味しいお料理が食べられるなんて、すごいし羨ましい。
 
 平社員はどんなに頑張ってもこんな生活は無理だろうなぁ。
 東京の家賃は高い。お給料の三分の一は持っていかれてしまう。

 切り詰めたら年に一度くらいは来れるかな?

 なんてことを考えていたら。

「引っ越しはいつにする?」

 パニックになるようなことを又、言われてしまった。

「ひ、引っ越しぃ!?」
「お互いを早く知るためには、一緒に住むのが一番だろう?」

 どうしてそうなるんですか?
 それに付き合いたてのカップルだってさすがに、いきなり一緒に住むなんてないと思うけど。

「阿久津社長、だからさっきから言ってますけど──」
「私は(仮)だろ?」
「そうです」
「じゃあ、(仮)を止めよう。今、この瞬間から君は俺の彼女」

 ええっーーー!?
 この人、正気?

「これで文句はないよね?」
「ですが…」
「俺では不満?」

 ……ずるいです。
 だって、こんな素敵な人に”君は俺の彼女”と言われて、首を横に振る女性がいるはずないもの。

 
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