そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

第三章

 こうして強引に私と阿久津社長との同居が始まったのだった。

 長年住んでいたアパートに挨拶に行った時──。

『山田さん、お世話になりました』
『とうとう美里ちゃんもいなくなっちゃうねの。寂しくなるわ、話相手がいなくなっちゃって』

 そんな時、山田さんの上のお兄さんが偶然やって来て。

『母さん。俺、家を買ったんだ。さっき契約してきたところ。大した家じゃないんだけど、父さんと母さんの部屋もあるから。実は、健吾にも頭金少し協力してもらってさ』 

 照れくさそうに言ったのだった。
 健吾さんとは、山田さんの下の息子さん。
 
 二人の息子さんとも彼女に夢中の割には、ちゃんと考えてくれていたんだと嬉しくなる。
 上のお兄ちゃんは、結婚間近だそう。
 
 その時の山田さんの顔、忘れない。

 驚いて、涙ぐんで。
 人って本当に嬉しい時って、言葉が出ないんだ。
 
 ご夫婦で一所懸命育てた二人の息子さん。
 子供たちもそのことちゃんと分かってた。だから私も余計に嬉しくてもらい泣きしちゃった。

『おめでとう、山田さん!』

 騒ぎを聞きつけたアパートの人たちもやって来て、みんなで家にあるものを持ち寄って夜遅くまでお祝いしたっけ。

 
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