そんな簡単に彼女を決めていいんですか? ~偶然から始まる運命の恋!?~

第四話

 夕食の片付けが終わった私は涼介さんの隣に少し離れて座る。

「疲れた?」
「ちょっぴり」
「食洗器使えばいいのに」
「二人分の食器くらいなら、食洗器など使わずに洗ったほうが早いから」
「はい、コーヒー」

 差し出されたカップを受け取ると、一口飲む。
 酸味を伴った甘味が口の中に広がる。疲れた体を癒してくれるような程よい濃さと苦み。
 本当に涼介さんの入れるコーヒーは美味しい。

「老後は喫茶店のマスターになろうかな」なんて冗談めかす。

 この部屋は高層階ではあるけれど、最上階ではない。それでも眼下には街の灯りが見える。
 高速を走る車はミニカーのよう。

 ここで暮らし始めてからの一日はとても早い。
 独り暮らしでは感じたことのない感覚。
 朝起きると、すぐに食事の支度をして涼介さんを起こす。
 一緒に朝食をとって、大抵彼が先に家を出る。片付けをした後、私も出社して。
 仕事が終われば夕食の買い物、準備。
 涼介さんが九時前に帰ってくることはないから、それまでにお掃除したり、のんびりテレビを見たり。
 二人で遅い夕食。
 別々の部屋で就寝。
 
 考えたら涼介さんのほうが何倍も働いている。

「なに?」

 私の視線を感じたのか、彼に問いかけられた。

「涼介さんって、私より沢山働いてるんだなって」

 カップをテーブルに置くと、彼は静かに笑う。

「責任の重さが違うからね」

 責任の重さ──。

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