情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。



「優美さんとは、取引先でも合ったが同志に近い関係だった。なぜかね、私に頼んできた。優菜ちゃんは小さかったし、覚えてないだろうけど……キリシマ、あれを」


 キリシマと呼ばれた秘書さんは、封筒を出して私の前に置いた。


「開けてみて」

「は、はい……拝見します」


 私は封筒から二つの書類を出す。紙は少し古いのか色褪せていたが、正式な文書だとわかった。


「え……婚約契約書?」


 あっ、もしかして……!昔、お母様が言っていたとある人に大事な書類を預けたって言っていたものの一つ?

 それに……お会いしたことがある一番記憶に残ってるのは、お髭が似合うおじさまと紺色のスーツを着ていた男の子だ。


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