もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

11 それぞれの後悔 ※不快な描写あり※

 ダミアーノに命令されて、キアラが人を殺めたのは一度目の人生からだった。

 最初は毒殺から。
 数時間で体内から排出されて証拠も消える毒を、密かに飲ませる仕事だった。

「そんな恐ろしいことできない」と、何度もダミアーノに懇願した。

 でも彼の甘い言葉に唆されて、愛しくて愛しくて彼のためなら何でもやれるって思って。彼女は意を決して紅茶に毒を混ぜた。

 標的である侯爵夫人の死亡が確認されたときは、身体中の血が沸騰したみたいに熱くなった。胸が苦しくて心臓が爆ぜそうだった。
 それから急激に寒気が襲ってきてガタガタと全身が震えはじめて、芯から肉体が凍ってしまいそうだった。自分の精神がどこかへ消えていきそうで恐ろしかった。

 ダミアーノはそんな錯乱したキアラを優しく抱きしめて、賞賛の言葉とキスの雨を降らせてくれて……その夜、初めて二人は結ばれた。

 とろけるくらいに幸福だった。あんなに気持ち良いことは生まれて初めてだった。
 自分はこんなに幸せになっていいのかしらと不思議に思ったくらいだ。

 あぁ、ダミアーノ様のために人を殺して良かった(・・・・)……。

 その後は感覚が麻痺したように、平気で凄惨なことを行うようになった。
 もう、人が死んでもどうでもいい。だってダミアーノ様が褒めてくれるんだもの。気持ちいいこともいっぱいしてくれるんだもの。

 そのために、一人や二人犠牲になっても……私は構わない。
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