龍神様のお菓子
「おい」

 ゆっくりと顔をあげると、そこには不機嫌そうな表情をした龍青が作務衣姿のまま立っている。手には真新しい大きな傘が握られており、大粒の雨が傘を伝って流れていく。

「…龍青さん」

「お前、馬鹿なの?そうやって傘ささねぇからいつも風邪引くんじゃん」

夢香はその言葉に目を見開く。

また、私の知らないことを話してるー。

 記憶によれば、龍青の前で傘をささなかったのは今日が初めての事である。なのに何故ー。

「…まるで私のことを知った様な言い方ですね」

 無意識に、言葉尻が冷たくなってしまったのは今の今まで放って置かれたせいかもしれない。

「…何?怒ってんの?」

「いえ、別に…」

 俯いて、そう答える夢香に龍青はわかりやすくため息を吐く。

「あのさ、ちょっと話せね?」

龍青はそういうと、公園のベンチを指差した。

「雨ですよ…」

「問題ねぇよ、もう止むから」

龍青はそういうと、強引に夢香の腕を引っ張った。

「ど、どうしてそんなことわかるんですか?」

「いったろ、俺神様だって」

「はぁ?」

 意味不明な事を口走る龍青に成されるがまま夢香は公園のベンチへと引っ張られた。
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