助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

冤罪事件の真相①

 目が覚めれば、天井には眩しいシャンデリアのきらめきが。そして、背中には絹の柔らかい感触。
 這い出るのも大変なくらい沈む、よくスプリングの効いたベッドから抜け出して、メルは大きく欠伸をした。

(よく眠れた……やっぱり疲れてたんだ)

 彼女は昨晩から、王宮の客室を借り受けている。
 初日だということで幾分か気を張り詰めていたはずなのだけれど、いつしか寝心地のよいベッドに誘われるようにして、夢の世界へと旅立っていた。

 部屋にあるものはなんでも使っていいと言われたので、精緻な薔薇が彫りこまれた身支度用の鏡台に座り、備え付けの化粧品でメルは本日も姿を変える。幸い、シーベルの口聞きもあり城で働く宮女の衣装を借り受けることができた。髪も軽く結い上げまとめる。
 宮女の衣装は華やかな宮廷らしくドレスに寄っており、慣れないメルは着付けに手間取った。後でラルドリスにでもおかしくないか見てもらわなければなるまい。

 まだぬくいベッドで丸まっていたチタを呼び寄せ、食事のクルミと水を与えた後、袖口の絞りの奥に隠れてもらう。そうしてメルは移動するべく部屋を出た。
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