助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね
「いやぁ。ふとしたことで、ものの見方ががらっと変わったりしてしまうのが、人間というものなのですよね」
「どういう意味だよ」
「おや、包み隠さず言っても?」
「……ちっ、俺は部屋に戻るぞ」

 ラルドリスはそう言い捨てると足音高く去り、最近の彼らしくない態度をメルは心配する。

「どうしたんでしょう、体の調子でも悪いんでしょうか……?」
「まあまあ。若気の至りというやつです。許してあげてください」
 
 そんなシーベルの言葉を受け、メルは最近の自分と照らし合わせてそういうものかなと納得した。いちいち喜んだり急に苛立ったりと豊かな感情に振り回されるのはとても大変だ。彼女は後で気持ちの休まる薬湯でも淹れてあげて一緒に落ち着こうかなと、魔女らしい気遣いを考えてあげるのだった。
< 260 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop