助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

建国記念祭の始まり

 午前十時。城の城壁から数か所から、赤、黄、青、緑など、目にも鮮やかな煙が炊き上げられ、国民の歓声が上がる。

 本日、アルクリフ王国は、建国三百年の記念日を迎えた。
 方々の教会からは祝いの金が鳴らされ、この日人々は、栄華を極めしこの国に生まれた幸運を一時の間噛み締めるのだ……。

「始まりましたね」

 それを城壁の上から、メルとラルドリスは見つめていた。
 城内での式典に合わせ、ラルドリスは、白色の礼装に身を包んでいる。ところどころ宝石があしらわれた豪華なコートを羽織り、腰には細い金のサーベルを佩いて。
 そしてメルも、それに合わせるようにパールピンクのドレスとオペラグローブを身に着け、頭髪もアルメリアを模(かたど)った髪飾りで高くまとめている。

 今朝ボルドフとシーベルが挨拶に来た。ボルドフは式典が終わるまで、周囲によからぬ動きが無いか目を光らせ、シーベルはぎりぎりまでこちらの派閥への取り込みに奔走するようだ。
 だから、彼の側にはメルがいる。今日、すべての区切りをつけ、彼をこの国の王様にするために。
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