助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

この国に立つ、ひとりとして

 ザハールが、壇上の隅に退いた後、しばししてそれは始まった。 
 しっかりと背筋を伸ばしたラルドリスは、司会者から名を呼ばれるとひな壇に足をかけ、大勢の臣下を見据える。

「若いな……。この国を任せるには心元ないのでは」
「だが、不思議と目を引く」

 臣下の反応はまちまちであったが、ラルドリスに気にした雰囲気はない。ダンと強く踏み込み、壇上に乗り上げる。

「――皆……今日は、この国の新たな門出を祝うために集まってくれて感謝する! 今までこうして大勢の前で話す機会はあまりなかった。しかし、本日は勝手だが、自分の考えを――俺自身のことを飾らない言葉で皆に伝えたくて、ここに立った」

 ラルドリスは一度臣下たちを見回すと、嬉しそうに笑う。
 国家の未来を委ねられた場で私事について話すなど、不謹慎だと思う者もいたのか、あまり好意的な反応はない。それでもラルドリスは、臆さず、大きく声を張る。

「知っての通り、俺は第二王子として、兄より遅く生まれた。国王になることなど視野になく、与えられた身分に不足なく生きる……自分の意思など持たず、国の象徴のひとつとしてただそこに在るべきなのだと、ずっとそう思っていた。だが、ある大きな事件が俺の人生を今、変えようとしている」
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