助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

因縁の終着②

 ラルドリスが自らの意志をすべてさらけ出す中、それとは異なる場所で。
 決死の攻防は人知れず続けられていた。メルは無残にドレスのあちこちを切り裂かれつつ、肩で息をする。

 足元には幾つもの骨の小片が砕け、転がっている。
 それらは、魔術師が呼び出した小型の魔獣の依り代。
 目標たるラルドリスへ向かって駆け抜けようとしたそれらを、メルは全力の魔法を使い、チタの手をも借りて阻止した。足元で小さなリスは、毛皮を血に塗れさせぐったりとしている。

(ごめんね……)

 メルはその体をそっと両手ですくい上げると、安全な隅の方に寝かせ、魔術師を見た。
 魔術師にメルは、自分からの攻撃を一切加えられていない。だが……。

「どうしたの? 魔術師……先程から攻撃の間隔が広まっているみたいだけれど?」
「城内に渦巻く負の思念が弱まっているのだ……」

 せっつくように尋ねたティーラへの魔術師の答えは、彼の操れる力が尽きてきていることを示すものだ。その原因は……。
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