助けた王子に妃へと望まれた魔女ですけれど、自然が恋しいので森に帰りますね

風車小屋の少女①

 兵士たちの追撃を逃れた翌々日。
 難所となる関の攻略を控えつつ三人は、馬車で順調に街道を進んでいた。

「おい、シーベル。なんだかこの辺り、あんまりいい雰囲気じゃないな。道行く人の表情が冴えない気がする……」

 ラルドリスが席を立ち、御者台に通じる扉を開けてシーベルの隣に座る。
 車内に座るメルにも、開いた窓から、彼らの会話が届いてきた。

「ベルナール領に入りましたからね。隣領のことですからよく知っていますが、ここ数年、大幅に税金が上げられ、民は生活に困窮しているようです」
「ベルナール……確かザハールの後ろ盾であったな」

 ラルドリスはそれを聞くと、がしがしと頭髪を掻き乱す。

「……俺たちのせいか」
「否めませんな。陣営の強化のために惜しみなく財貨を使い人を集めているのでしょう。それを国民の血税で賄おうとは業腹ですが、国王が倒れている今、国政をまとめているのは彼です。面と向かって文句を言える者はなかなかいないでしょうね」
< 99 / 374 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop