飼い主は幼なじみ
雷雨とチョコレート

"陽side"

夕食を終えて夏都の部屋に戻る。
俺の玄関兼好きな人の部屋。

夏都……俺の事いい加減見ろよ。

何故か俺は急に気持ちが抑えられなくなった

「夏都……いつになったら俺の事見るんだよ」

チュッ

俺はこいつにキスをした。

「なにするのよ!」

夏都は俺を突き飛ばして涙目になりながら叫んだ

こんな顔が見たかったわけじゃない

こんなこと言わせたかったわけじゃない

「お前は俺の飼い犬だろ?」

「飼い犬になった覚えない」

「わかったって言ったの夏都じゃん」

「何が目的なの」

「目的なんてなにもないよ。いいじゃん。お試し飼い犬やってみない?」

俺は一体何を言ってるんだろうか
そんなの夏都がいいって言うわけない
もっとマシなこと言えよ、俺

「……わかった。お試しね。お試しだからね」

は?夏都大丈夫か?
いや、俺が自分で言っといてなんだが
結構意味わかんないことになってるぞ?

「わかったならいい。飼い犬は俺の言うこと聞けよ」

「……あんまり変なことは言わないでよね」

かわいい……何その顔
誘ってんのかよ
この意味わからんやり取りしてる最中だけど夏都の可愛い顔みたら頬が緩みそうで耐えるのに必死だった

「じゃあとりあえず勉強」

「ねぇ陽。陽絶対勉強できるよね?なのに何でいつもあんな点数取ってるの」

「勉強むり」

うそ。むしろ簡単すぎて勉強出来ないふりすんの大変なんですけど。

夏都と過ごせる時間を増やしたくて何とか言い訳を作りたくて考えて考えてたどり着いた方法がバカになることだった。

「てかやっと名前で呼んだ。最近あんたとかしか呼ばれてなかった」

「そんなことないし」

「飼い犬さん。これから名前で呼ばなかったらその度にキスするからね」

「?!やめてよ。そんなの」

あー楽しい。コロコロ変わる表情。
キモくてもなんて思われてもいい。夏都のそばに居られるのならなんだっていいんだ。
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