ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
 ちょうどひと月前、勇者によって魔王が倒された。

 魔王が倒されたことで長年人々を苦しめていたモンスター達は消え去り、世界には平和が取り戻された。
 世界中が喜びに湧き、その喜びは、この小さなグリシナ村まで届いたのだった。

「あの勇者様はすごいお方だったのね」

 ビオレッタは以前見た勇者を思い描く。

 勇者御一行は以前、グリシナ村にも立ち寄ってくれたことがあったのだ。その時はまだ勇者も旅立って日が浅く、傷だらけの身体で傷薬を買い求めにやって来た記憶がある。

 勇者達はしばらくこの村に滞在し、村の外に蔓延るモンスターを倒してはレベル上げに勤しんでいたようだった。

 勇者は村に戻るたび、ビオレッタの道具屋で傷薬を買った。
 日が経つにつれ、勇者の身体に受ける傷は減っていく。グリシナ村を発つ頃にはレベルが上がったのだろう、傷一つ作らずモンスターを倒せるまでになっていた。
 それでも勇者は、最後まで傷薬を買ってくれた。「よく効く傷薬をありがとう」と。

 
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