ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~

グリシナ村会議

「ビオレッタちゃん、よく言ってくれたわ。うちも困っていたのよ」

 そう口を開いたのは宿屋のオリバだ。
 宿屋も冒険者の宿泊客が少なくなったことで、先行きの不安があったようだった。

 ここはグリシナ村の高台にある村長の家。
 この村で一番広い広間には、村の皆が勢揃いしていた。



 コリーナの丘で泣いたあの日。ビオレッタは、ラウレルに胸の内を打ち明けた。
 すると彼は「道具屋の危機は村の危機だ」と、村の皆にも相談してみることを勧めてくれた。

「皆、ビオレッタさんのことを大事に思っています。きっと力になってくれますよ。もちろん俺も」

 背中を押されたビオレッタは、まず村長に話をしてみることにした。
 恥を忍んでおそるおそる事情を説明したところ、村長は予想以上に親身に話を聞いてくれた。そして村の皆でこれからの話し合いをしようと企画してくれたのだった。

 話が大きくなってしまい恐縮していたビオレッタだったが、集まってみると意外にも皆まじめに向き合ってくれた。


「うちはもう武器なんてさっぱり売れねえよ。研ぎ直しばかりでさ」

 城下町へ出稼ぎに行っていたシリオも、わざわざ帰ってきてくれた。彼のところもだいぶ苦しいとは聞いていたが、道具屋と同じくなかなか大変なようだ。

 逆に、生活が安定してきたのは農業や漁業などで生計を立てている村民達だった。
 村の外に出てもモンスターがおらず安全になったため、村で取れた作物を隣街などで売ることが容易になった。
 特にグリシナ村の芋はとても人気があるそうだ。そういえば、ラウレルも旨い旨いといつも言う。お世辞だと思っていたが、あれは本当だったらしい。

「オリバもシリオもビオレッタも、農業をやればいいんじゃない?」

 村民の一人が提案した。しかし。

「俺は親父から継いだ武器屋を潰したくはねえんだ」

 シリオがその案を突っぱねる。
 オリバもビオレッタも、店を辞めたくないのは同じだった。

「武器屋も宿屋も道具屋も、この村には必要じゃ。なんとか維持してほしいがの……」

 村長も、三人それぞれに店を続けてほしいようなのだが……

 
< 43 / 96 >

この作品をシェア

pagetop