ただの道具屋の娘ですが、世界を救った勇者様と同居生活を始めます。~予知夢のお告げにより、勇者様から溺愛されています~
村の皆で、ああでもない・こうでもないと話を始めた。
 つまりは、こんな平和な世の中でも売れる商品があって、それを買いにグリシナ村まで来てくれる人が増えれば良いのだ。
 その『売れる商品』と『来てくれる人』が足りていないわけなのだが。

「プラドにはハーブ料理があって、バザールがあって……コラール村には広大なビオラ畑があったわ」

 ビオレッタは、ラウレルと訪れた二つの場所を思い返した。そういえば、どちらにもちゃんとその土地の売りがあった。
 グリシナ村の強みと言えば、やはり砂浜での『予知夢』だが。

「『リヴェーラの石』はどうじゃ。道具屋にも売っておろう。あれは役に立つし綺麗じゃろう?」

 村長が言う特産品『リヴェーラの石』とは、グリシナの浜辺に落ちている小さな透明の石のことだ。
 身に付けていれば防御と魅力が僅かに上がる優れものなのだが、ビオレッタの道具屋ではあまり売れることはない。
 
「売れ行きは良くありません。綺麗ですが宝石ではないので、中途半端なのかもしれませんね」
「そうかの……」
「砂浜の予知夢をもっと広く売り込めば、人も来るんじゃない?」
「芋料理を名物にして客を寄せるとかは」
「あんな料理、どこの街でも食べるでしょ?」
「なんでも、村が『名物』って言えば名物になるんじゃねえの」

 皆からポンポンと意見が飛び交う。

 話し合いは、村長がお開きを知らせるまで続いた。
 結局はっきりとした案は浮かばぬまま時間切れとなってしまったが、とりあえず村がやるべきことは二つ。
『グリシナ村に、人を呼び込むこと』
『グリシナ村の名物を作ること』だ。

 もう少し世の中が落ち着けば、平和になったぶん旅する者も多くなるだろう。
 その際にはグリシナ村にも人を呼び込めるよう『予知夢』の周知、そして来てくれた旅人達に『グリシナ村の名物』を提供したい。

 具体的なことをこれから考えていく必要がある。また各々考えたことを話し合おう、ということで、本日は解散となった。

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