お嬢様は今日も美しい
男爵令嬢を引き寄せ腰に手をまわして、これ見よがしに見せつけている王太子。
寄り添う相手、間違っていますけど。
本来なら王太子の横にいるのはお嬢様のはずなんですけどね。何を血迷っているのやら。
そうなのです。お嬢様の唯一の汚点。
それは、王太子の婚約者だということ。
決して優秀とは言えない王太子殿下。
彼は正妃様のお子ではありますが第二王子。正妃様のご実家は、可もなく不可もない何の力も持たない伯爵家。
対して第一王子をお生みになった側妃様のご実家は政治・経済にも多大な力を持っている侯爵家。
第一王子の上に権力も強大な側妃様に対抗するには強力な後ろ盾が必要不可欠。
そこで、たまたま同い年だった筆頭公爵家のお嬢様に白羽の矢が立ってしまった。
王族の臣籍降下で興ったローシャス家。血筋も財力も申し分ないのが災いしてしまった。政治事には関心がなく、ましてや娘を王太子妃になどと考えていなかった当家。
公爵である旦那様もずいぶんと頑張って下さったようなのですが、再三の懇願に根負けしたというのか、王家に逆らい続けるのも不敬に当たるとして渋々了承する形で収まった。