お嬢様は今日も美しい
当のお嬢様は王太子には微塵の興味も示さず、我関せずを貫いていらっしゃる。王太子もお嬢様がお気に召さなかったのか、最初から傲慢で不遜な態度を隠さなかったですからね。
貴族の婚約というものに本人同士の意思など関係ないとはいえ、できれば好感を持てる相手であればよかったのですが。
なまけ癖のある王太子で王家の教育もさぼり気味であまり進んでいないとか、視察と称してお付きの者の目を掻い潜って下町で豪遊しているとか、婚約者ではない令嬢を常に侍らせているとか……どこまで本当なのかわりませんが悪い噂に事欠かない王太子。
そんな中でも、婚約者でない令嬢を侍らせるというのは真実ですね。現に今目の前に隠すこともなく、男爵令嬢が婚約者のごとくぴったりと寄り添っているのですから。
やがて、湖に張った静謐な水面のごとく清閑な佇まいで王太子と対峙されたお嬢様。
さて、どんな結末になるのやら、お嬢様のおそばに控えつつ、とくと拝見いたしましょう。