恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

Spot14 ベリが丘総合病院

数日後・ベリが丘びより編集部。

(さくらベーカリーさんには市の職員が行ったって言ってたけど、壱世さんは知らなかったんだよね)
ベリ野に行ってから数日、胡桃の頭は再開発の件でいっぱいだった。

さくらベーカリーの跡地に行った際の壱世の深刻な様子も気になっている。
(それにしても、烏辺グループって最近どこかで聞いたような……うーん、CMでよく見てるだけかな)

「江田さん」
背後からの声に身体がビクッと小さく跳ねる。

「なんスかその反応」
声をかけてきたのは橘だった。

「取材の打ち合わせの時間ですけど」
「あ、そうだった。ごめん」


「秋冬のメニューってことは、温かさを画面に出したいですよね」
編集部にあるミーティングテーブルで、橘が次の取材の写真について質問する。

(……あの話だと、木菟屋さんも移転しちゃいそうだなぁ)
「江田さん? 聞いてます?」
「……え?」

「なんなんですか? さっきから。食べ物の話題くらいは集中してくださいよ」
「〝くらいは〟って何よー」
飯桐(いいぎり)がやっと取材に応じてくれるって張り切ってたじゃないスか」
不満げな胡桃に、橘は呆れ気味に言う。

『飯桐』はノースエリアにある老舗の料亭で、胡桃の粘り強い交渉の末、取材を受けてもらえることになった。

「……そうでした。ごめん、集中する」

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