恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

Spot16 ???

午後十一時。

壱世は栗須の屋敷にいた。
応接間には十玖子と一名の警察官、それになぜか飯桐からついてきた橘もいる。

壱世がもともと高梨の事故の件を警察に相談していたこと、それに彼の立場もあり、胡桃が連れ去られたであろうことはすぐに真剣に取り合ってもらえた。
それでもまだ事件性の有無を断定するには至らないため、あくまでも相談という形で刑事事件担当の警察官に来てもらっている。
市長の自宅に警察が出入りすればすぐにマスコミに嗅ぎつけられて余計な騒ぎになってしまいそうなので、門の中にありマスコミが入って来られないこの家で進展を待つことにした。

「スマートフォンも荷物も持ってないなんて心配ねえ」
十玖子が心配そうに言う。

「いや、それは逆に俺とのつながりがはっきりしにくくて良かったのかもしれない」
それでも、胡桃の足取りが掴みにくくなってしまっているのも事実だ。

副市長の携帯は当然のようにつながらず、〝仕事の件〟と前置きをした上で烏辺の会社や携帯にかけてみても無視を決め込まれている。

しかしそれがかえって胡桃の行方不明に二人が関与していることを確信させる。

< 157 / 173 >

この作品をシェア

pagetop