恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
「いいところ知ってます」

ほろ酔いの胡桃が案内したのは海の見える場所にある木製のテーブルだった。
海に向かったベンチに、二人は隣り合って座る。

「木曜限定バーガーがずっと食べてみたかったのでタイミングが合ってラッキーでした」
ハンバーガーを写真に撮りながら胡桃が言った。

限定バーガーは、バンズの間に肉厚なビーフパティ、トマトやレタス、それにナッツとスライスされたカマンベールチーズが挟まっている。

「もしかして、一人で行くつもりだったのか?」
「あはは。バレました? 最近取材からの直帰ばっかりであの時間にビジネスエリアにいることがあまりないので」
胡桃は照れながら言うと、ハンバーガーをひと口かじった。

「君はパーティーでもしっかり食べていたような気がするが……よく食べるな」

「ベリが丘がおいしいものだらけなのが悪いんです!」

「どこの街でも同じだろ」

壱世の言葉に、胡桃はがっかりする。

「もしかして市長は、ベリが丘があまりお好きではないんですか?」

「そんなことはない。良い街だと思ってる。じゃなきゃ市長になんてならない」

嘘ではなさそうだが、あまり熱を感じない言い方に胡桃はそれ以上聞くのをやめた。
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