恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

Spot3 サウスパーク

「ところで、市長は何か食べられたんですか?」
胡桃が尋ねる。

「いや、ほとんどあいさつしてたから」
「あんなに豪華な料理だったのにものすごくもったいないですね」

「慣れてるよ。あとで適当に何か食べる」
食いしん坊な胡桃の発言に壱世はまたおかしそうに笑う。

「市長、ちょっと寄り道できませんか?」

胡桃の要望でたどり着いたのはビジネスエリアの路地裏にあるハンバーガーショップだった。
店の前に置かれた黒板の看板にはチョークでハンバーガーの絵と【ベリーズバーガー】という店名が書かれている。

「ハンバーガー? この格好では目立ちすぎるから俺は遠慮するよ」
「テイクアウトできますから私が買ってきますよ。何がいいですか?」
胡桃はスマホ画面でこの店のメニューを見せた。

「看板メニューはこのベリーベリーバーガーなんですけど、木曜の二十一時以降だけの限定メニューがあるんです。これは私も食べたことがなくて」
食べ物の話題になり、胡桃の目元と口元は無意識にどんどん綻んでいく。

「じゃあその限定のやつ」
「了解です。私のはチリポテトにするので、市長のはチーズポテトにさせてもらいますね」

胡桃はスキップでもしそうなテンションでバーガーショップに入っていった。

「べつに車内で食べてもらっても構わないが」
「こぼしそうで怖いので。私の家からも近いですし」

胡桃が壱世にお願いして立ち寄ってもらったのは、ベリが丘のサウスエリアにある大きな公園、サウスパークだった。

この公園は新しく整備されていて、薄暗くはあるが夜でも雰囲気が明るい。
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