恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜

Spot2 Berigaokaグランドホテル

***

午後七時。
Berigaokaグランドホテル・大広間。
ベリが丘で一番大きなこのホテルは、編集部や市庁舎と同じビジネスエリアにある。

(なんでこんなことに……)

つい数時間前にはまったく想像しなかった服装、空間、そして隣に立つ人物を見ながら、普段とは違う雰囲気のメイクをほどこされた顔で胡桃は呆然としていた。

ツヤのある黒いAラインのドレスに、シャンパンゴールドのショールを羽織り、足元にはヒールの高いパンプス、アップにした髪の耳元には、ひかえめながらも高級そうな石のついたティアドロップ形のイヤリングが輝いている。

立食形式のパーティー会場は、あちらこちらからゲストの声やグラスで乾杯する音が聞こえる。
ホテルの仄暗い広間の床は、市長室にも似たふかふかの絨毯だ。

そして胡桃の隣にはスリーピーススーツに身を包んだ栗須壱世が立っている。

***

『は? 婚約者? 何言ってるんですか!?』
市長室で、胡桃は壱世の突飛な発言に一拍置いて反応した。
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