恋愛日和 〜市長と恋するベリが丘〜
「今何時でしょうか」
「二時くらいかな」
「眠れないんですか?」

胡桃の質問に、壱世はどことなく困ったように笑った。

「君は『緊張して眠れないかも』って言っていたわりにぐっすり眠ってたな」
「え」
(また声に出てた?)
壱世は笑っている。

「今日は……あ、もう昨日ですけど、壱世さんのことを色々知れました」
胡桃は壱世の方を見て言う。

「料理もできるとか」
「少しだけな」

「小学生の頃に外国に住んでたとか」
「大学もアメリカだったけど」
「え、そうなんですか? 新情報」

素直に驚いたリアクションをする胡桃に彼はまた笑う。

「そういえば、壱世さんのおじいさまがあの市長だったなんて。教えてくれたら良かったのに」
胡桃は少し拗ねたように言ってしまう。

「ああ、保育園で聞いた時は君とこんな風に関わるとも思っていなかったから」

(……だけど、その後だってもっと話す機会はあった気がするんだけどな)
胡桃はまた少し寂しさを感じる。

壱世はタバコが一本終わると灰皿に押し付けて、吸うのをやめた。


「っていうのは建前だな」


「え?」

< 74 / 173 >

この作品をシェア

pagetop