微熱愛でいいから、ちょうだい
「…ん、それで?」
「本日から、瑶くんの彼女に再立候補します!」
「だろうな、無理だけど」
……ぐ、今日も相変わらず、なびかない。
幼なじみの笹原(ささはら)瑶くん。
わたしは彼のことが好きなのだ。
そりゃもうずーっと前から瑶くん一筋なわけだけど、残念ながら、まだ、彼女にはなれてない。
朝が弱い瑶くんを起こすのは、ご近所さんでもあるわたしの日課。
仕事の都合上、家を開けることの多い瑶くんの両親に変わって、身の回りの整理を勝手にやったりもしている。
小さい頃は、それをからかわれて、チビママと呼ばれたりもしたけど、べつに誰にでも世話をするわけじゃない。
瑶くんだから。特別だから。
「莉乃(りの)、行くぞ」
「あっ、うん」
階段下から呼ばれ、部屋の片隅に置いていたカバンを持ってあとを追う。
ぽつぽつ雨のつたう道路脇に、透明なふたつの傘がならんだ。