腹黒王子様の溺愛が規格外。
偽りのない優しさなんて、高望みしすぎなことぐらいわかっていた。けれど、今まで近づいてくるヤツらは金目当てで媚打ってくるのばかりだったから、僕には嬉しかったんだ。

だけど……時折、僕の優しさが偽りだと桜に知られたらどうしようと考えてしまう。


きっと、優しいのに変わりはないんだからいいに決まってるって言ってくれるんだろうけれど。




そんな、桜の目の前から急に姿を消した。それは、ちゃんと桜を迎えに行きたかったからだ。

あの頃の未熟な僕じゃなくて。


立派になって、桜を助け出すことができるようになって迎えに行きたかった。


桜の目の前に、雅としてもう一度現れたのはほんの出来心だったんだ。

試すような真似をしたかったわけではないけれど、あの時の僕は桜に本当に好かれていたのか心配で。


だから、会いに行って見たら想像以上だった。抱きついてきてくれたのは、たとえ“蓮”が相手じゃなかったとしてもとても嬉しかった、はずなのに……。


醜い感情が溢れて、あんな態度をとってしまった。


本当にいつまでたってもみっともない男だ。


謝罪の気持ちも込めて、桜の方を向いて抱きしめ返した。


いつか、あの時の僕がこんなになって迎えに行ったんだよって、言いたい。


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