腹黒王子様の溺愛が規格外。
大きい声出しても、今授業中だし聞こえないよね。

体育館使ってるクラスはなさそうだったし……。


でも、その時だった。

ガチャッと音がして、扉が開いたのだ。


「桜!!」

「しゅう、ちゃん……?」

「大丈夫か!?」


現れたのは、いつだって私を守ってくれる、秋ちゃんだった。

なんだか安心して更に涙が溢れる中、また蓮くん以外の男の人に抱きついてしまった。


「怪我はないか?怖かったよな、もっと早くに助けてやれれば……」

「ううんそんなことないよ、助けに来てくれてありがと……蓮くん……?」


ふと人の気配がして、横を見るとそこには蓮くんがいた。


青ざめていて顔色がとても悪い。

大丈夫?って言いたかった。だけど、まだ足がすくんでいて秋ちゃんなしでは立ってられない。


ああ、なんだかこの状況……蓮くんに助け出してもらった時と、そっくりだ。


「お前、彼氏だろ?情けなーね、彼女がこんなことされてんのに何にもできなくて」

「無力なことぐらい、俺が一番わかってる……でも許せない。桜は俺の女だ」


いつもと違う口調だ。


「桜はしばらく俺が預かる。いいよな、桜?」

「えっ……?」

「……桜、だめだよね」

「う、うんっ……だって、蓮くんの婚約者だし私……それに、あの家にもう近づきたくないよ」

「最近マンション借りたんだよ」


まさかの秋ちゃんの言葉に動揺が隠せない。
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