一途な副社長は寵愛する彼女に愛を注ぐ
仁の店を出た俺は、やっぱり酔っていたらしい。

「もしもし?」

ヒカリに電話をかけてしまった。

「おお。起きてたか?」

「うん。ギリね。寝るとこでしたよ。どうしたの?麗の事?」

お前の声が聞きたかった。
とは言えない。

「いや。ああ。そうだ。」

「あはは。何?どっち?」

「フッ。ヒカリ」

会いたい。

言葉を飲み込む。

「何?塁さん」

「麗の挙式、よろしくな」
結局、誤魔化す。

「ふふふ!そんな事言う為にわざわざこんな時間に電話してきたんですか?」

だよな。
どうかしてたな。

「まぁな。んじや。悪かったな。
おやすみヒカリ」

「ははは!挙式、楽しみですね!バレないようにしてくださいね?おやすみなさい塁さん」

「ああ。おやすみ」

そして電話を切った。
俺はその場にしゃがみ込む。

クソッ!
声を電話で聞いただけだぞ?

なのに、何で反応してんだよ俺は。

結局余計にムラついて、その日はなかなか寝つく事が出来なかった。

もう、本当に我慢の限界かもしれない。
ヒカリが欲しい。
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