陽気なドクターは執着を拗らせている。
「はい? いつですか?」
『何を言っているんだ、この人は』とでも言うような目をすると、綿谷先生は「とりあえず席について。カクテル飲んで」と言いながら、私をイスに座らせた。
しょうがなく、頂いたカクテルに少し口をつける。
綿谷先生のことはムカつくが、カクテルは甘くて美味しかった。
「あの夜、体を重ねた時に約束してくれたけど?」
「申し訳ありませんが、あの夜は泥酔してました。正直全く覚えてません」
「あんなに俺を求めてくれたのに!? 宇野女ちゃんすっごく可愛くて、俺も初めて自分の欲を思いのままぶつけることができたんだよ? さいっっこうの夜だったのに宇野女ちゃん、俺をブロックしてるんだもんなー」
『自分の欲を思いのまま』
そう言われて、1年前のあの夜、自分の目に映った光景を再び思い出す。
初対面の相手との一夜にアレはない。
いくら私が求めていたからと言われても、自分の欲をさらけ出し過ぎている。