時は全てを奪うけれど
Prologue
 誰もいない、季節外れの海辺。
 絵になる17歳の少年少女が、肩を寄せて砂浜に足跡を残し歩いている。そんな二人は、外野に邪魔されるのを嫌い、誰にも気づかれぬよう、静かに絆を深めてきた。
 夕陽が海に沈んだ頃、少年は少女にそっと口づけようとしたが、
「ちょっと待って…」
 彼女は、さり気なく制止した。
「どうした?」
「ねぇ。最低で最悪なお願いを聞いてくれる?」
 彼女は彼に、あるお願いをした。それは、とても純粋で、とても残酷なことだった…。
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