病んだ心をつまびいて


なぜだか、秋道さんにはじめて料理を振舞ったときのことを思い出していた。



引っ越しの挨拶をしに菓子折を持っていくなり、げっそりゾンビに出迎えられた初対面。



お腹を空かせた彼に作ったハンバーグ。



お母さんとお父さん、そして私。
材料は3人分きっかりしかなかったのに、つい私のぶんのハンバーグを作り、差しだしてしまった。



一瞬後悔しかけたけど、おいしそうに食べる秋道さんを見つめていたらどうでもよくなった。



むしろなんだか幸せな心地になったのをいまでもおぼえてる。



だって、もぐもぐと食べる秋道さんの表情が、なによりも幸せそうだったから。



秋道さんはそのとき恋に落ちたと言っていたけど、いまならすこしわかるかも。



限界に近い状態のとき、こんなふうに温もりのある料理を振る舞われたら、胃袋どころか心臓までがっしり掴まれちゃう。




きっと、秋道さんもこんな気持ちだったのかな。

こんなふうに、幸せを感じてくれていたのかな。




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