病んだ心をつまびいて
「まぁ、そのあとすぐに僕は引っ越してしまったからね。あれからもう10年以上も経ってる。忘れてしまうのも無理ないよ」
アズマさんは寂しげに笑った。
しかしすぐに、こちらに流された瞳に艶が乗る。
「お別れのとき、茜ちゃんは言ってくれたんだ。
"大きくなったらアズくんと結婚する"って」
毛布から取り出される私の左手。
身をかがめたアズマさんは、その薬指にくちづける。
まぶたを下ろしては、まるでたしかめるような長いキスだった。
「気持ち悪いよね……幼い頃の約束を、バカ正直に信じてきたなんて」
「……」
「けどね、たった一枚の写真で、なんでも頑張れるヒーローみたいな気分になれたんだ」
「……」
「そんな僕のお姫様は、もうすぐ18歳」
スプリングの軋み。
手をついたアズマさんが、私の頬にくちびるを寄せる。
「迎えにきたよ、茜ちゃん」
私だけを欲する、ふたつの瞳。
とろけるような声に体温が急激に上がった。
ただでさえ熱で頭がぼやけてるのに、それをさらに煮詰められていく。
「アズマさ……だめ……」
「だめ?なにがだめなの?こんなに大好きなのに……受け入れてもらえない?」
ちゅ、ちゅ、と
耳やおでこにキスを落としてくるのがくすぐったい。
その肩を押せば、遊ぶように手首をとられてしまう。
「私、アズマさんには釣り合わない……」
「なぜそうおもうの?僕にはきみしかいないのに」
「ぁっ、ん……」
首すじを強く吸われる。
アズマさんのわずかな苛立ちが伝わってきた。