病んだ心をつまびいて



「私……死のうと、おもってたんです、今日」



私の肌を甘やかしていたくちびるが止まった。




「とてもいやなことがあって。もう消えてしまおうと……なにもかも手放そうとおもってた」

「……」

「弱いんです、私、すごく弱い。アズマさんが思うような人間じゃない」

「……」

「あきらめてください……ごめんなさいっ」




優しくされたくなかった。
求められたくなかった。

まだ生きていたいとおもってしまう。



世界のすべてが怖くて目を閉じる。


そんな私のくちびるに、やわらかいものが重ねられる。

あっというまに離れていくと






「なら……一緒に死のう」






頬に、水滴。



まぶたを開くと、涙をこぼすアズマさんがいた。





「なにもしてあげられなくてごめん。死にたいとおもうほど辛い時間を過ごした茜ちゃんに、また心を摩耗させるようなことを言った……」

「アズマさ……」

「死にたいのならそれでいい」

「……」

「僕も一緒に死ぬ。ふたりならきっと怖くないよ」





ポタポタ、私の肌を濡らす美しい透明な粒が、心の爛れを覆うように伝っていく。



< 274 / 283 >

この作品をシェア

pagetop