恋愛下手の恋模様
そんなある日。延び延びになっていた私たち新人の歓迎会が開かれることになった。
いい機会だと思ったのは、私だけではなかったと思う。なぜなら営業職は外出が多く、名前どころかまだ顔を見たことがない人もいたからだ。
当日は、店の一間を借り切っての飲み会となった。
総勢およそ三十名。ざっと見渡してみたところ、部内メンバーのほとんどが参加しているようだった。
歓迎会は、ほぼ予定通りに始まった。
料理もお酒も程よく行き渡り、場が賑わい出した頃、細身で長身の男性が姿を現した。
見覚えがなかった。長めの前髪とやや薄暗い照明のせいで、メガネをかけた目元がはっきりと見えない。けれどその人がまとう空気感からは、なんとなく、イケメンの部類に入るタイプの人だろうと想像できた。
絶対に世界が違う人だ――。
そんなことを思っていると、私の対面に座っていた同期の宍戸が勢いよく立ち上がった。
「補佐、お疲れ様でした!」
その人は宍戸の声に振り向くと、軽く片手を上げた。
それがきっかけとなったのか、他の社員たちもその男性に声をかけ始めた。
彼は一人一人に応えながら、部長が座る席へと近づいて行く。
お酒が入って上機嫌な様子の部長が、彼の肩を軽くたたいているのが見えた。
私は、隣に座る遼子さんに訊ねた。
「今来られたあの方、どなたですか?」
「え?」
ほろ酔い加減でくつろいでいた遼子さんは私の視線の先をたどると、目元を緩めた。
「山中補佐ね。大きな案件を抱えていたから、この何か月かはほとんど毎日席にいなかったの。初めて見たっていう新入社員は、たぶん岡野さんだけじゃないでしょうね」
「お忙しい方なんですね……」
いい機会だと思ったのは、私だけではなかったと思う。なぜなら営業職は外出が多く、名前どころかまだ顔を見たことがない人もいたからだ。
当日は、店の一間を借り切っての飲み会となった。
総勢およそ三十名。ざっと見渡してみたところ、部内メンバーのほとんどが参加しているようだった。
歓迎会は、ほぼ予定通りに始まった。
料理もお酒も程よく行き渡り、場が賑わい出した頃、細身で長身の男性が姿を現した。
見覚えがなかった。長めの前髪とやや薄暗い照明のせいで、メガネをかけた目元がはっきりと見えない。けれどその人がまとう空気感からは、なんとなく、イケメンの部類に入るタイプの人だろうと想像できた。
絶対に世界が違う人だ――。
そんなことを思っていると、私の対面に座っていた同期の宍戸が勢いよく立ち上がった。
「補佐、お疲れ様でした!」
その人は宍戸の声に振り向くと、軽く片手を上げた。
それがきっかけとなったのか、他の社員たちもその男性に声をかけ始めた。
彼は一人一人に応えながら、部長が座る席へと近づいて行く。
お酒が入って上機嫌な様子の部長が、彼の肩を軽くたたいているのが見えた。
私は、隣に座る遼子さんに訊ねた。
「今来られたあの方、どなたですか?」
「え?」
ほろ酔い加減でくつろいでいた遼子さんは私の視線の先をたどると、目元を緩めた。
「山中補佐ね。大きな案件を抱えていたから、この何か月かはほとんど毎日席にいなかったの。初めて見たっていう新入社員は、たぶん岡野さんだけじゃないでしょうね」
「お忙しい方なんですね……」