繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
 勇ましいことを言ったところで、いつも臆病な自分に何ができるだろう。そうは思うけれど、秋也が一歩進むなら、奈江も一歩進まなきゃいけない。そうやって歩んでいける人と生きていきたいと誓ったのだから。

「俺さ、オーダーメイドランプの販売をやりたいんだ。今まで出会った仲間たちと試行錯誤はしてきた。これからもしながら生きていく。安定した生活なんてできないかもしれない」

 申し訳なさと希望、両方をにじませた表情で、秋也は言う。

「転機って、四季と同じですよね? 人生にも四季があるんだと思います」
「そうかもしれないな」
「これから先、つらいことも悲しいこともいろいろあると思うんです」

 秋也とは夏に出会い、秋をともに過ごし、冬をふたりで越えようとしている。

「冬が終われば、春が来ますね」

 つらいことのあとには、必ず幸せがやってくると信じている。

「春も、奈江と過ごしたいな」

 秋也はしみじみとつぶやく。

「これから先、何度となく繰り返す季節を、奈江と一緒に過ごしていきたいって思ってるよ」
「私も」

 信じてる。一緒に過ごせるって。秋也となら、何度だって四季という名の幸せな未来が過ごせるって、信じている。




【第三話 完】
< 172 / 172 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:12

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません

総文字数/18,890

ファンタジー19ページ

第6回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
婚約者に裏切られた伯爵令嬢イリア・ローレンスは、 父の命で若き国王フェイラン・アーデンの側妃となる。 だが王宮で待っていたのは、 「世継ぎを産んだら子を残して離縁せよ」 という非情な条件だった。 夫となったフェイランは冷たく、 まるで心を閉ざしている。 けれど、イリアは知る。 ──彼が、兄王ウルリックの死と 王妃リゼットの誤解に苦しむ、 孤独な人だということを。 そして、王宮を去る決意をしたイリアだが…… 「次は、愛する人と幸せになってください」 「離縁する気か? ……許さない」 無関心だった夫が急に態度を変えて── 誤解と孤独を癒す、王宮ラブロマンス。
嘘よりも真実よりも

総文字数/89,348

恋愛(純愛)134ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
株式会社金城マーケティング 専務  金城総司 × 翻訳家 久我みちる あなたがほしくて 嘘をつく……
運命に導かれた転生魔女は、呪われた王太子を救いたい

総文字数/118,871

ファンタジー177ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
大学生の御堂星麗奈(セレナ)は、卒論に没頭するあまり思いもよらぬ事故で命を落としてしまう。 次に目覚めたのは、二千年前に災厄をもたらした魔女イザベラが封印された祠。そこで、冷徹な王太子アレクと出会う。 復活したイザベラではないかと疑われるセレナは王宮へ連れていかれ、彼の監視下に置かれることに。 自身がイザベラである可能性に悩む中、セレナはアレクを苦しめるある呪いに気づく。彼の婚約者に次々と不幸が起きている原因が、イザベラの呪いではないかというのだ。 真相を確かめようと、セレナは王太子の六人目の婚約者の座を受け入れることにするのだが──。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop