繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
 いつだったか、後輩の向井がそう言っていた。

「急に、何?」
「夢は叶えるためにあるんです。何度だって、夢にチャレンジしてもいいと思うんです。やりたいことがあるなら、ためらわずにやってみてもいいと思うんです」

 秋也は愉快そうに奈江を見下ろしていたが、そう言うと、くしゃりと顔を歪める。

「奈江にはかなわないよな」
「もう、誰にも遠慮しなくていいんです」
「遠慮か……。遠慮してたのかな、俺は。ずっとやってみたいことはあったけど、うまく行くかはわからない。今の生活を捨てて、チャレンジしていいのかもわからない。そんな気持ちだったのは、確かだけどね。奈江がいるから、なおさら、そう思うよ」
「私がいるから、チャレンジできるって考えてもいいんです」
「奈江を巻き込んでもいいって?」
「私、秋也さんがらんぷやで働いてる姿を見るのが好きなんです。技術的なことは何もできないけど、それ以外のことで支えていきたいって思ってるんです」
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