繊細な早坂さんは楽しむことを知らない
「あの、ありがとうございます」
「お礼を言うのは、こっちだから。ああ、そうだ。早坂さんって、いつもあの電車で帰ってるの?」
急に話題を変えて、秋也がそう尋ねてくる。
「あの電車……?」
「ほら、前に横前駅で会ったときの」
「あっ、そうですね……。猪川さんにお会いしたときはいつもより少し遅い電車でしたけど、その前後でまちまちなんです」
後輩に会わないように時間を変えてるなんて言えないが、うそではない。
「そっか。じゃあ、8時ぐらいなら横前駅で会える? 今度、会社帰りに食事でも行かないか?」
「えっ、食事?」
「俺、いつも仕事が終わって帰ると、横前に着くのは8時ぐらいになるんだよ」
そうなのか。毎日のように同じ時間帯に横前駅にいるのに会えないのは、少しの時間ですれ違っているのかもしれない。
「いい?」
「あ……、どうしようかな」
男の人から食事の誘いを受けるなんて、記憶する限り、初めてじゃないだろうか。いつも、自宅アパートと会社を往復するだけの生活で、おいしいお店も知らないし、急な誘いに困惑してしまう。
「俺は、また早坂さんに会いたいなって思ってるんだけど」
「お礼を言うのは、こっちだから。ああ、そうだ。早坂さんって、いつもあの電車で帰ってるの?」
急に話題を変えて、秋也がそう尋ねてくる。
「あの電車……?」
「ほら、前に横前駅で会ったときの」
「あっ、そうですね……。猪川さんにお会いしたときはいつもより少し遅い電車でしたけど、その前後でまちまちなんです」
後輩に会わないように時間を変えてるなんて言えないが、うそではない。
「そっか。じゃあ、8時ぐらいなら横前駅で会える? 今度、会社帰りに食事でも行かないか?」
「えっ、食事?」
「俺、いつも仕事が終わって帰ると、横前に着くのは8時ぐらいになるんだよ」
そうなのか。毎日のように同じ時間帯に横前駅にいるのに会えないのは、少しの時間ですれ違っているのかもしれない。
「いい?」
「あ……、どうしようかな」
男の人から食事の誘いを受けるなんて、記憶する限り、初めてじゃないだろうか。いつも、自宅アパートと会社を往復するだけの生活で、おいしいお店も知らないし、急な誘いに困惑してしまう。
「俺は、また早坂さんに会いたいなって思ってるんだけど」