俺ノ記憶
俺は、その場から立つとソイツの手首を掴んだ。
「へ?」
「お前も来い」
「え」
「嫌なら、言葉撤回するけど」
「……」
俺とソイツは、図書館を後にした。
おいおいおい。コイツを何処に連れ出す気だ?
誰も来ない廊下。
俺は、ソイツを壁に追いやる。
ソイツの目を見る。
怯えた顔。そそる。
に、してもコイツの瞳……紫色だ。
誘惑されている気分だ。
「…先輩の目の色」
「なんだよ」
「赤いんですね」
「そりゃー、そうだろ。吸血鬼なんだから」
「噂はほんとなんですね」
「噂?」
「〝この学校の図書館に吸血鬼が居る〟って、言う噂があるんです」
「ふーん。そんな、噂があるんだ。どうする?今からでも引けるけど」
ソイツは、俺にハグをしてきた。
「会えて嬉しい」
急に声色を変えてきた。
「はぁ?」
「覚えてない?」
「何をだ」
「覚えてないんだね。吸血鬼界では、ラブラブだったんだよ?でも、いつしか忽然と姿を消しちゃったから……ものすごく探した」
「?」
「まだ、わからない?」
首筋を見せる。
「?!」
そこには、……俺と彼女しかわからない証(あかし)、半分は紫でもう半分はピンクの薔薇が、そこにあった。
「まさか……」
「そう、そのまさかだよ?思い出した?」
「う、うわあああああああああああ!」
俺はかち割るような頭痛に襲われた。
両目から、血が出てくる。
吸血鬼界のルールには〝逆らえない〟してわイケナイ事がある。
それは、〝元カノや元彼氏には会っては行けない。もし、破ると…男の方が崩壊する〟だ。
それを早々破ってしまった。
俺は足から崩れ落ちた。
おい、マジかよ。
ソイツは、俺の肩を触れてきた。
「ねぇ、一つだけ運命を一つだけ変えることができるの……知ってた?」
一つ……だけ?
「私の首を噛んで……証を消すことができる」
……はぁ?そんなこと……出来るのかよ。
「噛んで?早く終わらせて……楽になろ?」
俺は、ソイツの顔を見て……
ゆっくりソイツの肩を掴む。
そして……
ソイツの首を強く噛んだ。
「っ」
すると、ソイツの証が消え……暗闇へと落ちて逝った……