望まれない花嫁に愛満ちる初恋婚~財閥御曹司は想い続けた令嬢をもう離さない~
溌剌とした印象の女性で、話し方もはきはきしている。

「こ、こちらこそよろしくお願いいたします」

「では早速、髪のお手入れをしましょうね」

「はい。結城さんありがとうございます」

美紅の言葉に、彼女が微妙な表情を浮かべた。

「あの、もしよかったら明日香と名前で呼んで頂けないでしょうか」

「え?……あ、はい分かりました。では明日香さんと呼ばせていただきます」

戸惑いを覚えながらも、断る理由はないので頷く。

「ありがとうございます。実は分家のお嬢様に“有紀”さまと言う方がいらっしゃって、以前誤解を招いたことがあるため、苗字は使わないようにしているんです」

「そうなんですね」

自分の名前を名乗るのに気を遣わなくてはならないなんて、本家の使用人は大変だ。

明日香は寝室のドレッサーに美紅を座らせると、着替えたばかりのセットアップが汚れないように、ふわりとケープをかけてくれた。

それから台のうえに、ヘアスプレーやメイク道具一式が入ったボックスを置く。

美紅がまともなメイク道具を持っていないと分かっていたのか、全て用意して来てくれたようだ。
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