京極家の花嫁〜財閥御曹司の秘めた愛〜
「少しでもお役に立てたのならよかったです。それから笛吹に情報を流している使用人が誰か探ってみようと思います」

明日香が少し声を潜めて言うので、美紅は驚いた。そこまで力になろうとしてくれるだなんて思わなかったのだ。

「気持は嬉しいけど無理はしないでくださいね。明日香さんと他の使用人の仲が気まずくなったら申し訳ないので」

「大丈夫です。これでも結構要領がいい方なので、ぼろは出しません」

「たしかに要領はよさそうだけど……」

初対面のときから、てきぱき動く優秀そうな人だと感じていた。

「安心してください。それから私に敬語は不要ですよ。美紅様は雇用主なんですから」

「……分かった。でも明日香さんにも私を美紅様と呼ぶのは止めて欲しいです」

「うーん……それはちょっとまずくないですか?」

明日香は美紅の言葉に驚きの表情になったあと、腕を組んで悩みはじめた。

「様付けで呼ばれるのは慣れてないし、緊張しちゃうの。協力してくれるなら話す機会が増えていくだろうから」

「そういうことなら分かりました。上司が側にいるときは無理ですから臨機応変に対応します」

「ありがとう」

彼女が柔軟な考えでよかったと思う。それにとても頼もしい。

味方ができたようで、ようやく少し安心できた。

















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